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涙が溢れた日

【涙が溢れた日】

ピアノを弾くことで
まことのいのち を
見出そうと

長い長い年月
ひとりで毎日
ピアノに向き合ってきました。

教わるのではなく

自分の内側に聴き
自分の内深くの
声ならぬ声を聴きたい

そう思って
ひとりで弾き続けてきました。

しかし、練習は戦いでした。

責める声
引き下げる声が
どこからともなく聞こえ
それと戦いながら
弾いてきました。

ときには
天の声のような
妙なる響きも聴こえます。
それは、
すべての辛さをも消すほどに
復活のいのちを一瞬に与えます。

その一瞬は内側の「いのちの声」と
ひとつ響きになる
天来のよろこびだから。
その瞬間に出逢うために
私は弾いてきました。

しかし
病になった時
その戦いの苦しみから解放される!
と瞬時、感謝に溢れたのには
自ら驚きました。

それほど辛かったとは
私自身も気づけていませんでした。

大手術 そして

療養3ヶ月。

ピアノ調律も
随分空いてしまっていました。

1929年製 ベヒシュタイン

名取さん以外に
調律をお願いする思いが湧かなくて
諦めたり
諦められなかったり

名取さんも大病され
復帰されたばかり。

ゲルハルトオピッツ氏や
藤田真央さん他 
素晴らしいピアニストの方々から
深く信頼されている名取さん。

メッセージを送っても返信がない。

そうだよね。

厳選されたお仕事には
選んでいただくのは
難しいよね。
 

それでも

いつまでも待ちます、と
メッセージを置いて
時間が経ちました。
  

ある日

連絡が来たのです。

行きます、と。

月と太陽がひっくり返るくらい嬉しかった。

そして今日
名取さんが来てくださいました😭✨✨

車到着、
私は玄関を飛び出しました!

お弟子さんの運転の助手席
座席から降りられる瞬間
涙が溢れてなりませんでした。

「名取さん、私弾けてないのです。
病になり、解放されたと思ったんです」
と話す

やいなや、

「いやいや、やることがあるんです。
これからが楽しむピアノです。
そのために命生かされたんです」

そう言って、
快気祝いを
ポイっと
さりげなく渡されました😭

なんという愛でしょう。

パンが焼き上がり
ワッフルを焼けるごとに

名取さんとお弟子さんに見せに行き

調律で塞がっている手を
煩わせないように

一口サイズに切って
お口に入れさせていただき
楽しかったです✨✨

そのごとに
パンの世界の話が
響きと呼応するように話される。

すべての瞬間が芸術
すべての会話のアカデミックさが
名取さんの屈託ない素朴に包まれ
希望ばかりが私に染み渡りました。

調律後、名取さん
お弟子さんと
ご一緒に
炊き立て玄米に
アツアツ中華とろみをかけた
お昼ごはんを
召し上がっていただきながら
沢山沢山お話をしてくださり
うなづき笑い
楽しかったです。

涙が何度溢れたでしょう。

「いいんです。

いま 
弾きたい音を鳴らすだけで。

これからですよ。楽しいのは。

自分の音の世界を
つくっていってくださいよ。

ひとりで
自分の音を探す旅をするのです。

ひとりじゃないと
見つからないのです。

そのために今まで頑張ってきたのですからね。」


さいたま市緑区ピアノ教室
まえだやえこ