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新しい門出を祝って


植物を育てる暮らしを始めて
どれくらい だったでしょう。


植物から
ちからをもらいます。



おともだちから
株分けしてもらった
この黄緑にベージュのふちどり、
薄紫のお花が咲くこの植物、

あれ?
名前はなんだったかしら。



そのおともだちは
2年前に
30代で天に帰りました。




今年もまた
株は
ちからを蓄え
光を受けて
上へ上へと新芽を
伸ばしています。

まるで
やえこさん!
天と
響きあいましょう!と
聞こえるようです。





ちいさな庭の
戸を開け放し

ゆっくりと
静まりました。


ひかりを含んだ
さわやかな風が
リビングに入ってくるのを
感じました。




しずけさが
心地よく

まるで
すべてが 空になっていくようでした。

プティが
戸から顔も身も乗りだし

くんくん
おそらの匂いを  かいでいます。








おはなしは
変わりますが



週末に
幼稚園から教えている生徒さんの
お母様が
訪ねていらっしゃいました。




お菓子とお茶を添えて
和やかに 笑いながら
お話をしていました。

とつぜん
立たれました。

そして
綺麗に身体を真っ直ぐにされ
挨拶されました。


「幼い頃から 教えてくださり、
   おかげさまで 大学を卒業し、
   社会人となりました。
   こんなに 長く続いた
   習い事は他になく、
   また、私は娘のピアノが大好きで
   そのように育ててくださった先生。
   ほんとうにほんとうに
   感謝しております
   ありがとうございました。」



深々とお辞儀をされた
お母様。
目にいっぱい
涙をためておられました。



私も涙が溢れてきました。


「おつかれさまでした。」


わたしの心からの
あふれ溢れた
素直な想いでした。





社会人になったばかりの生徒さんは
先日
レッスンに  来ました。



その数日後に 
いらしたお母様。

この春の、
大学を卒業まで

母としての長い日々、
様々なことを
ひとつ身体に受けとめ続けられ、

幼き頃より
娘にピアノがあったことに対する
心からの感謝を込めて
出向いてくださったお母様。



胸があつくなりました。












そして
有り難く思いました。



幼稚園から永きにわたり
通い続けてくださり、

その時々を
励まさせてもらい、

ともに
分かち合い、

たくさんの曲を通して
深く
響きあってきたこと。

この生徒さんは
わたしが弾く曲と同じレベルの曲を
普通に弾いています。


立派に育たれたな、と
感慨深く思います。

と同時に
わたし自身ももっと研鑽を積まなくては、
と励まされています。








しかし、
どこまで育たれたか、や
進度や
はじめられた年代
それ以上に

わたしの中では
重きを感じていることが
ずっとあります。

それは
なんだろう、
折にふれ 思い巡らすのです。

すると
いつも感じることがあります。


わたしは
すべての生徒さんと
それぞれに 
よろこびがあるということです。

まるで
その生徒さんが
わたしにとって
ひとりしかいない生徒さんのように。




そして
不思議な感覚もあるのです。

それは



わたしは
「先生」
ですが、


生徒さんとは
「先生と生徒」
とも
「おともだち」
とも
「親子」
とも違う、
感覚をも感じているということです。

それは なんだろう。

わかろうとも  しませんでしたが
不思議な感覚は
ずっとともにありました。



それが
腑に落ちて
わかったのです。





日曜日
お友達が
話してくれた言葉によって、
でした。


その方はおっしゃいました。




わたしの教室の在り方や
先生であるわたし
生徒さん達を含めて

「さんび隊なんだわ!」
と。  



お分かりになるでしょうか。


さんび隊。

不思議なことば  でしょう。



合唱ほど多くはない人数
10人くらいで前に立ち
それぞれが
曲に響きあいながら

ひびきが
歌詞の美しさが
前に向かい
開かれて
広げられ

空に向かうひびきが
あたりいっぱいに
充ち満ちる様子。




あっ、
そうだわ!








その言葉を聞いて
本当に
腑におちました。


そして
今まで以上に
自由を感じました。



わたしは
ピアノを教え、
すべての生徒さんを
上達へ上達へ導くものです。

そして
わたしにとっても
深く学ぶ場でもあります。


そして
生徒さんは
ピアノを習いに来る、
のですが、

同時に

先生と空間と
音の中で響きあい
よろこびあい
感動をともに分かち合う 


これが
この教室の与えられている
レッスンなのだわ、
と。






教えるものも、
教わる生徒さんも
ともに
見るところは

音楽の愛。


そして
響きあう。






さんび隊のメンバーには
音程が取りにくい方なども
いらっしゃいます。


しかし
その そろわない感じが
かえって
どこか  あたたかく 
まろやかで
くつろぎ
透明になる  不思議です。



きっと神秘の 謎解きは

見ているところ、
たっているところにあるんだと思います。

ひとりひとりが 音の愛だけに立っている



この場は

そんな風でありたいです。

みんなが
音のなかで
自由で
うんと泳ぎ、うんとよろこび、
うんと泣ける場所であれるところ。